まぶたを通して朝日が突き刺さる。高橋ひよりは、夜更かしして
制服のまま寝てしまった事を思い出した。まぶたを閉じたまま、
枕元にあるはずの目覚まし時計に手を伸ばす。まるでウエハース
を握りつぶしたような妙な感触。手の中に残った白い固まりには、
見覚えのある近所の雑居ビルの名前が……
『大怪獣 高橋ひより、××市にあらわる！』
貞明の目前の卓には、趣向を凝らし、贅を尽くした料理の数々が
並んでいた。鼻孔をくすぐる香気に、全身がそれを欲して訴えか
ける。しかし貞明はその料理に手をつける事はない。囚われの身
となった今、故国の物でない限り、何も口にするつもりは無い。
しかし、その貞明の前にかつての故国の人々が現れて訴える言葉
とは……
『甘露』
時に天正十八年、関白秀吉による北条攻めに伴い、石田三成は北
条傘下の支城・忍城を攻めた。迎える忍城の兵はわずか千。その
戦闘に立つのは城主である成田氏長が娘、甲斐姫。戟を手に馬を
駆り、真田の先駆けをも討ち取るその武勇。だがその陰には、妖
の陰がちらついていた。
『華と氷、舞い散る如く』
霧で覆われた戦場に現れた二体の巨大ロボット兵器、それは敗色
濃厚なエシュテタインが最後の抵抗にと投入した新兵器だった。
対消滅反応炉とブラックホール機関を備え、敵の戦車中隊を壊滅
に追い込んだ『還らずの王』と名付けられた巨大システム。敗北
が決められた中で、最出撃に備える搭乗員の想いとは……
『還らずの王』
戦う女性たちを描く四編を収録！
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