夜の明ける前に

Progressive35




Progressive35表紙
神々の盟約により、『春の新緑の恵みの侯』の領地は、年の三分の一を『荒ぶる雪の
嵐の王』による吹雪に閉ざされる。春の訪れの直前、吹雪の合間に催される目覚め
の祝祭。その小祭司を勤めた事が、シュラクァの運命を決定づけた。術師として領
神に仕える事となったシュラクァの視る世界とは……
『目醒め』

「まだだよ、寝ていて」毛布の隙間から入り込んだ冷気で目を覚ました俺に、窓際に
立った黒い影が優しげに言った。昨夜の溶け合いの余韻を感じさせるような、甘い
声。黒い影がそっとにじり寄り、体を起こした俺に腕をからめてくる。だが俺は、
情事の続きよりも少し話がしたかった……
『夜明け前』

魔術師スワロー・サインは空を飛んだ。頭の中で呪文の詠唱が終わると、体の重さ
が消え、体は夜のビル街を飛んでいった。サインの祖霊である、燕の飛跡と同じよ
うに。組織の命令で、サインはビッグ・ジョウと共に裏切り者を追跡していた。組
織の元処刑者、「シュライク・ジュノー」を。
『鳥は翼で空を飛ばない』

奈緒は幸福感に包まれた朝を迎えた。隣りで眠る雅弘が、昨晩「結婚しよう」って
言ってくれたから。しかし、目覚めた雅弘との会話が微妙にかみ合わない。昨日は
五月二十日の土曜日、だけど、食卓の傍らのテレビは、今日も五月二十日の土曜日
だと告げていた……
『風、過ぎる朝』

僕はかつて、世界の全てを信じていた。父を、祖国を、総統を信じていた。しかし、
現在の僕はどれも信じていない。全てを捨てて、女性の元に馳せ参じようとようと
している。まるで、愛妾と引き替えに異民族に祖国を売った中国の将軍みたいに……
『運命を変えた三時間』

何かが始まる、また何かが終わる時刻。夜明け前を描く五編の短編を収録。


執筆者・作品紹介
 作者  作品名 挿絵 
 白霧草  目醒め −
 小川一水  夜明け前 村山慶 .
 真冬真  鳥は翼で空を飛ばない −
 広沢りょうた  風、過ぎる朝 ROMY
 村山慶  運命を変えた三時間 村山慶 

オフセットA5サイズ
表紙デザイン:Teddy's Cage
総項数:102ページ
価格:600円
発行:Progressive
発売:ジャンク・ヤード



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Last Updated: Friday, 27-Jul-2007 21:37:58 JST