バス停のある風景

Progressive30




Progressive30表紙
夕月思惟穂は、必死の思いで発車しかかったバスに駆け
込んだ。彼女は友人との挨拶もそこそこに、鞄から大帝
国情報通信技術研究所製十六式蒸気式演算器を引っ張り
出す。そして彼女の指は、猛然とキーを叩き始めた。
宿題を片づけるために。
――『代価』

「あなた、バスを待ってるの?」
透明な塩化ビニルで囲まれた田舎のバス停の待合所で、
私は声をかけられた。甘ロリとでもいうのだろうか、場
違いな服装の彼女は私の事を知っていた。しかし私は、
彼女の事も、自分がなぜここに居るのかも判らなかった。
――『やみの引くそで』

普段は自転車通学の沙樹がバスを待つのは今日が二度目
の事だった。バス停で所在無げにしている彼女の前を通
りがかったのは、毎朝顔を合わせる、自転車通学の少年
だった。
――『彼女の風景』

いつも乗るより二十分早いバスの、乗って正面の三人席
がその席だ。
純は今日もその席を独り占めする。
毎朝その席に並んで座る二人のじゃまをするために。
――『フラットライン・トライアングル』

ある田舎のバス路線。そこで織りなす四つのストーリー。
執筆者・作品紹介
 作者  作品名 挿絵 
 Teddy's Cage  バス停のある風景  
 村山慶  代価 村山慶
 真冬真  やみの引くそで 天野拓美
 早坂千尋  彼女の風景  ROMY
 白霧草  フラットライン・トライアングル  天野拓美

オフセットA5サイズ
表紙デザイン:Teddy's Cage
総項数:74ページ
価格:500円
発行:Progressive
発売:ジャンク・ヤード



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Last Updated: Saturday, 22-Oct-2005 21:20:02 JST