「そういえば、淵東ってずっと髪型同じなんだな」放課後の教室でとりとめの
ない話をしていたときに、牧瀬達也はふと思いついたように言った。淵東佳奈
が小学校に上がる前から九年以上も伸ばしている髪。そのきっかけは、ちょっ
とした約束が発端だったのだが……。
――やくそくのしるし
日本最南端三番目の島。中学最後の夏をセンチメンタルにすごそうとしていた
高瀬真弓のもとを訪れたのは、本土からやってきた同い年の三崎一馬だった。
真弓の髪を、豚のしっぽ、子馬のしっぽとからかう彼に反発し、真弓はいつも
のポニーテールをほどいてしまう。しかし、彼が島を訪れたのには、隠された
理由があった。
――メモリアル・サマー
雑然とした学生食堂、一方的に殴られているのは僕。けんか相手の腕が、丁度
通りがかった彼女の手にあった日替わり定食をトレイごと跳ね上げる。トレイ
が床に落ちるよりも早く、彼女のひじがカウンターぎみにそいつのあごにヒッ
トする。その場を立ち去るショートカットの彼女をみて、僕は思った。これが
一目惚れってものかって。
――ファイアワーク・スターター
夏美は可愛い。夏美の髪を編むのは好きだ。僕は毎日、彼女の髪を三つ編みに
する。幸せな日常。けれど平穏は破られるのが定め。姉の幼馴染み皆戸由香
（超凶暴）やクラスメートの田中香苗（おとなしいけど実は……）のおかげで
僕の日々は非常に危険な香りが漂い始め……
――髪編み
四つの髪型の織りなす四重奏！
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